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+.。.:*・゚☆sasaru*・゚+
――…全てが終わった。
崩れ去っていくその古びた建物を見ながら思う。
雅幸から、紅蓮が願っていた事…
そして光一が求めていた物を聞いた俺は、
その場に根がついてしまったように動けなくなっていた。
俺を抱きしめ続けてくれるシンの体温と…
頭を撫でてくれる武の優しい手。
それだけを感じながら、俺はただ…
森の中で、忘れ去られたように建ち、
今まさに崩れ去ろうとしているその建物を見つめていた。
「…紅蓮、イルカ…」
そして、光一という人。
ポツリと呟いた瞬間、今までにない爆音が響いて――…
その後で、空に真っ赤な光が駆け上って行った。
それを、大分遠くから見つめていた俺は、
ただ…呆然とする頭の中で、
“ごめん”という言葉を、何度も何度も繰り返していた。
さようならも言えなかった…あの人たち。
たった少しの間しか居なかったけれど…
でも、俺の心の中に確実に住み着いていたあの人たち…。
ギュッと強く握り締めた手は、
雅幸の手に握られて…
そして、雅幸はというと――…
俺の手を握ったまま、その場にうずくまって動かなくなってしまった。
「雅幸…」
こいつにとって、
紅蓮や光一は何よりも大切な親友という存在であって…
そして、一緒に戦って来た仲間だったんだろう。
だというのに…
雅幸は、紅蓮や光一の願いを叶える為に、
自らの悲しみを消した。
ギュッと手を握られて、
俺は奥歯を噛みしめながら嗚咽を堪えた。
そんな俺の背後に、誰かが立った気配がした。
不思議に思って振り向くと…
そこには、今までに見たことないほどに表情が虚ろなミイトと…
そして、シキ先輩が立っていた。
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