終幕-エピローグ-

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とはいえ… 「夏休みが長いからって…一軒家買うことないだろ!」 ダンッと俺が長机を叩くと、 上に置かれていたオレンジジュースが多少外にこぼれた。 ついでに、家にはシキ先輩が学園に“学園祭準備”の為に残っただけで、 他の全員は帰還していたりする。 帰還…って言って良いのか不明だけれど。 その俺に向かって、ブーッと口を尖らせた雅幸は、 扇風機の前で「あー…」と声を出して遊んでいるシンに目線を向けた。 「だってさー、こーちゃんのお金もあるし…俺のお金もあるし?」 「だからって…一軒家なんて!」 俺が叫んだ時… 奥の台所から武が雑巾を持ってバタバタと出て来る。 「拭くの俺なんだから、こぼすんじゃねーよ!アホ!」 「あ…武、ごめん…」 「謝ればよし!」 よしよしと頭を撫でて、 机の上のジュースをふき取ると、武は再び台所に戻っていった。 まるでお母さんみたいだ… そんな事を思いながら後姿を見送る俺に、 「俺たちの母親かよ…」 シンのぼやきが扇風機に乗って聞こえてきた。 思わず、シンの言葉にプッと噴出した俺は、 テレビの前で真剣に何かをやっているミイトに目線を向ける。 ――…本当に、平和だ。こうして、シンと居られる事も… こうして、武や雅幸、ミイトと一緒に居られる事も…。 「ところで、さっきからミイト何やってんの?」 バサッとエロ本を開く雅幸を無視して、 俺はミイトにずるずると這って近づくと… その手元を覗き込んだ。 近づいてきた俺に気が付いたミイトは、 俺に向かって一つの箱を差し出して首を傾げた。 「今日、これが郵便受けに入っていたんですよ」 「これが?」 手の上に乗った正方形の箱を、クルリと回してみる。 のっぺりとした表面と、すべすべとした手触り… どう考えても… 「…ただの玩具?」 「さぁ?」 首を傾げて俺の手元の箱を見つめるミイト。 どこかに開ける口があるわけでもなく、 積み木のようにしか見えない。 だけど、これが家の郵便受けに入っていたという事は、 何か意味があるんだろうか?
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