終幕-エピローグ-

4/12
前へ
/635ページ
次へ
はて?と首を傾げる俺の手から、 ひょいっと誰かがそれを奪った。 「あっ!…ちょ、シン!」 「あー…なんだ。これ…前に俺が解いたパズルじゃねぇか」 「返せって!――…ってパズル?」 「まぁな」 身長差がかなりあるためか、 シンが片手を頭の上に上げてしまえば、 俺にはどうする事もできない。 そして当の本人であるシンは、 長い黒髪をかきあげて、片手に持った箱をくるくると回した。 「これでも一応手紙入れにもなっててな…」 ここをこうして、こうして、こう!と、 何度か手の中でカチャカチャと回された箱は… シンの手の中で容易にパカッと口を開いた。 その時、ガララッと玄関が開く音がして、 ドタドタと中に走り込んでくる三つの足音がする。 そして、バンッと俺たちが居る部屋の襖(ふすま)が開けられて、 そしてまたバンッと勢いよく閉じられる。 これは、しっかり閉じないと武に怒られるからだったりするんだけど…。 ん?と思って目線を向ければ… 真っ青な顔の海斗と、心の底から輝く笑顔をした満潮と、 疲れた様な表情を浮かべる唯が居た。 「どうしたんだ?三人とも…」 「出ました!」 「出た出た!」 「出たんだよ!!」 この三人、こうして別々の反応を見せる時は… 大体決まって、ろくな事は起こらない。 しかも、常識人の海斗が顔を青くして、 非常識人の満潮が顔を輝かせているとなったら… それはもう、確定だろう。 げんなりとする俺に、 音を聞きつけた武が台所から顔をのぞかせる。 「おー…、丁度いい所に来てんじゃねぇか。今、スイカ切ったからそっちに…」 そう言ってスイカの乗った皿を差し出す武。 その武の言葉をさえぎるように、 再び襖(ふすま)が勢いよく――… いや、勢いが良すぎて跳ね返って再び閉まったんだけど。 「「「「「………」」」」」 その開けた人物がまさに“ありえない”人物で… 俺たちはポカンと口を開けたまま硬直した。
/635ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1966人が本棚に入れています
本棚に追加