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ピチチピチ。
ピーチチチ。
鳥のさえずりと…
「おい。」
低いテノールの良い声。
その声の主が、俺の肩を掴んでユサユサと揺さぶってきた。
「おい、ササル。」
「…んあー?」
「生徒代表だから、俺先行ってるぞ。」
「んあー。」
「ササル。…聞いてんのか?」
「ん…ねみぃ…。」
「…場所わかんねぇだろ、お前。」
「分かる。」
「へーぇ。」
何を言われてるのか、なんて全く分からない。
俺にとって今、一番だいじなのは、睡眠だ。
この睡魔になんて、絶対に勝てそうにない。
「仕方ないな…。小林にでも頼んでいくか。」
「うー…。」
耳にまったく入ってこない声。
その声に、適当に返事をして、俺の頭をガシガシ撫でてくる手を振り払った。
「ったく…ガキかよ。お前。」
「ガキ、じゃねぇ…。」
「そんな事は聞こえるんだな。…この耳は。」
ピッ、って耳を勢い良く引かれる。
いてぇ…。
っていうか、俺は眠いんだよ。
この睡眠から覚まさないでくれよ…。
「今日から食堂か…、うざってぇ…。こいつが来たから、もう行かなくて良いと思ったのにな。」
ブツブツと何かを言う声が聞こえて来た。
けれど。
ゴソゴソという、着替えているような音が聞こえて…
その後でドアが開いて、シンが出て行く音が聞こえた。
…あれ。
ちょっと待て。
ちょっと待てよ、シン…。
俺、…もしかして、もしかしなくても…
お前が居ないと入学式の場所わかんねぇんじゃないか?
そうは思うものの、俺の考えとはうらはらに…
意識は確実に眠りの方向へと向かっていた―――…。
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