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風が吹き荒れて、天界城が燃え盛る。火の粉が空中へ飛び散り儚く消えた。
辺りは暗闇のはずだが、天界城の周りだけは異様に明るい。
美しかった城は、見るも無惨な姿に成り果てようとしていた。
「お前は存在してはならないのだ」
青みがかった銀色の髪が風で激しくなびく。
その男が見つめる先には、一人の少女がいた。
年は七歳くらいだろう。緑色の目を大きく見開き、徐々に距離をつめてくる男に怯えている。
少女の背後には何もない空間が広がっていた。そう、この城は空中に浮かんでいるのだ。
とうとう男は、少女にふれられる距離まで達した。少し前屈みになるとそっと手を伸ばす。
哀れむように慈しむように頬へふれた後、額に手を添える。
「すべてを失え」
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