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だが家に帰るためには、公園を横切った方が速いので迷いは捨てて歩き出した。
この外国人に関わらなければ大丈夫だと信じて。
「ねえ、そこのきみ。この空中に浮いた椅子、なんて言うのかな?」
ブランコを漕ぎながら、流暢な日本語で外国人が話しかけてきた。
辺りには人はいないので、自分に向けられた言葉だと瞬時に理解する。
「ブ、ブランコです」
とにかく返事をして、その場からすぐに立ち去ろうとした。
しかしできなかった。
先までブランコを漕いでいた外国人が、いつの間にかに背後にいたのだ。
「へえ、そうなんだ。じゃあ、質問してもいいかな」
にっこり笑った外国人が、顧みた未夜を凝視する。
「きみは九条未夜ちゃんかな?」
おもしろいものでも見たような顔つきを外国人はした。
「ち、違います。人違いです」
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