12人が本棚に入れています
本棚に追加
/71ページ
「タナトス様、
タナトス様」
暗く狭い部屋の中、低い声が木霊する。
それに続くようにいくつかの声が唱える。
男と女が混じっているようだ。
「タナトス様、
タナトス様」
たたっ、
駆ける音がした。
部屋の隅から隅まで、壁を這うように移動しているらしい。
彼、もしくは彼女が隅に辿り着いた時、声が一際大きくなった。
「タナトス様、
おいでください」
部屋の中央に置かれたろうそくの火が、ゆらり、と揺れた―――。
その時。
最初のコメントを投稿しよう!