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「夢、わかる」
「そうか。それで夢はあるのか?」
「うん、おかねもち、なりたい」
ふむ、と小さく唸ってから男は続けます。
「夢は、与えられる物だと思うか?」
「?」
「夢は、与えられるものじゃない。自分で手に入れる物なんだ。君だって、「お金持ちになりたいという夢を持ちなさい」と言われた訳じゃ無いだろう」
「うん」
男性が話す内容の半分は理解できていないのでしょうが、少年は静かに、時に相槌を打ちながら話を聞きます。
「でもね、夢を手に入れるためには"きっかけ"が必要なんだ」
「きっかけ?」
「そう、きっかけ。例えば、とても大きな飛行船が飛んでいるのを偶然見かけて「あぁ、飛行船に乗ってみたいな」って思う。するとその人は飛行船に乗るという事を実現しようとして、飛行船の整備士を目指すかも知れない。乗組員を目指すかも知れない」
「うん」
「君は、お金持ちになりたいという夢を持っている。でも"きっかけ"という要素が足りないが為に、どうやって実現しようとすれば良いのか分からないんだ」
「そうなの?」
男は「そうさ」と言いながら笑い、背負っていたリュックを下してサンドイッチを取り出しました。
そしてそれを半分こにして、少年に渡します。
「だから、まともな食べ物をあげられない代わりに……"きっかけ"をあげるよ」
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