ある時ある場所にて

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いつの間にか夕日が地平線へと沈み、暗くなってきた頃。     「なぁ、坊主」   「なんだ、おっさん」   「坊主は、何の為に戦ってるんだ?国か、家族か、それとも愛する人の為か」   「……そのどれでも無いな」     どう言う事だ?と、小屋の中の男が訊く。     「俺は、俺自身の為に戦っている」   「へえ、それは面白い。時間を持て余したおっさんに、少し話を聞かせてくれないか?」   「物好きだな」     男からの返答は無い。   少年は観念したのか、それとも話したかったのか定かでないが、静かに語りだした。     「俺は、小さい頃から親に嫌われていた。家は代々、国軍の英雄として活躍し、その名前を轟かせた者ばかりだった。だから俺も、軍に入る事を強制された」       「強制とは言え、いつだって家を飛び出せたし、逃げ出す事も出来た。きっと自殺するという手段もあっただろう。でも俺は、軍に入る事を選んでしまった。そして死ぬ事を恐れてしまった」       「親は、俺が軍に入った事を喜んだ。そう、まるで『死なせてやるきっかけが出来た』とでも言うかの様に、だ」       「俺は毎日の様に、銃を握りしめる羽目になった。ゲリラ戦から大きな戦争まで、年齢には不釣り合いな程に、様々な死線を潜り抜けて来た」       「いつの間にか俺は、人を殺す事が上手くなっていた。分かるんだ、どのタイミングで物陰から飛び出せば良いか、何処を狙えば相手は死ぬのか。お陰で俺は今もこうして、不味くて仕方のない食糧を頬張っている訳だ」     一通り話した、とでも言うかの様に、少年はまた食料を頬張る。   すると、男が口を開いた。
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