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「オイオイ坊主。今の話からどうして、自分の為だなんて結論が導き出されるんだ?」
「……死にたくないんだ。俺は、死にたくない。例え人を殺す事しか才能が無いのだとしても、戦争が無くなれば用済みである人間なのだとしても、俺は死にたくない」
「成程な。死にたくないから戦ってるのか、坊主は」
「おっさんこそ、何の為に戦ってるんだ?」
「俺はな、最初は愛する人の為に……妻の為に戦っていたんだ。しかし、妻には先立たれちまってな。途中からはただ、御国の為に戦う駒に成り下がっちまった」
男は話し終えると、また咳き込んだ。
「……なあ、おっさん」
「なんだ?」
「どうして人は、戦うんだろうな」
少年が訊くと、男は「そんなの簡単さ」と言った。
「皆、それぞれ何かを求めているからだ」
「何かを、求める……」
「坊主、お前は死にたくないんだろう?つまり、生きる事を求めている訳だ。そして俺は、そりゃあ先立たれこそしたが、愛した妻が笑っていたあの国の風景を守りたかった」
「だから戦っているのか?」
「ああ……大人になれば、わかるさ」
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