第3章

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夕方、個室がある方が少し騒がしかった。 散歩がてらうろつくと、以前同じ病室だった男性が亡くなったのだという事を知った。 同じ病気のその人が亡くなった事で、一気に俺は恐怖を覚えた。 すぐ側に死ってやつが、薄ら笑いを浮かべて手招きしてるような気がした・・・ [さっき、俺と同じ病気の人が亡くなったんだ。 個室に移って1週間で急変したって。 同じ病室だったから、世話になったし、何だか他人事じゃない気がして・・・ 抗がん剤治療が始まって、俺もヤケに体力落ちてるし、何だか凄い不安になってきたよ・・・] 弱音なんか吐きたくないって思ってたけど、自分の心の中にだけ留めて置くには、あまりにも衝撃が大きすぎた。 慰めて欲しいなんて思った訳じゃないけど、撫子に聞いて貰えるって思っただけで、少し気楽になった。 *** 抗がん剤治療の副作用は日に日に強くなっていった。 最初、投与が終われば起き上がり、散歩も可能だったのに、起き上がる事すら出来なくなっていった。 もちろんメールの返信も滞っていった。 撫子は変わらず朝と夕方メールをくれて、俺も気分が良いときは返信もした。 返信もロクに出来ないのに、よくメールくれるよな?って撫子にメールすると [忙しいとか、面倒だとか、そんな自分勝手な理由で返信しない訳じゃないでしょ? 気分が良いときに見て、気分が良いときに返信くれたらそれでいいし♪] 俺はありがとうってしか言えなかった。
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