8人が本棚に入れています
本棚に追加
/8ページ
キュルキュルと懐かしいテープの回る音がした。
再生してみると、一人の中年男性が全裸で暗闇の中踊っている。
聞こえるのは足踏みの音のみ。
つまり音楽は一切使用していない。
なんとも滑稽だが、これがまた妙に私達を期待させる。
次は何をどんな踊りをするのか?
皆が笑いだすと、もう止まらない。
私も耐え切れず、腹を抱えて笑った。
こんなにも笑ったのは、いつぶりだろうか。
皆も
「これは自分を捨てないと出来ない、ある意味ではアートだな」
尊敬か馬鹿にしているのかどっちとも取れる言い回しがまた何故か面白かった。
一人が
「ところでコレ誰よ?」
皆が疑問に思っていたが間違いなく悪戯だと、そんな疑問はすぐに笑いの風に飛ばされ、また皆笑い出した。
ふと原西さんに目をやると、笑っていない。
それどころか、顔が恐怖に戦(おのの)いている。
私だけが原西さんの異変に気付いた訳では無かった。
周りもどうしたかと心配そうな目をみせる。
直ぐさまビデオを一時停止して、原西さんに聞いてみる。その時私たちは旋律を覚えた。
まさに背筋の凍る一言。
最初のコメントを投稿しよう!