冬の山

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時計をふと見ると、夜の8時だった。吹雪で昼間から外が暗かったので、時間の感覚がおかしくなっていた。 酒もだいぶ進み、明るい話題から、暗い話題に話しが変わってきた。 「あいつは今頃何してるかな?」 安部が不意にそう言った。 私にも“あいつ”が誰の事なのか、薄々わかった。 半年ほど前の事だ。 この登山部は、半年前にもこの山に登っていた。 私は今回が初めての登山なので、前回はもちろん参加していない。 前回も登山は5人だった。小澤、秋山、安部、羽鳥、そして赤木だ。 何故今回は赤木がいないのか?それは、前回の登山で命を落としてしまったからだ。 不幸な事故だった。赤木は、崖で足を滑らせたのだ。 赤木は急な斜面を200メートルも転げ落ちた。
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