傷痕

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「動くな!」 幹部らしい男は優の首に後ろから腕を回し、俺に拳銃を向けて来た。 こんなものまで持ってきたのか!? 俺は軽く舌打ちをした。 「まずは武器を捨てろ!」 男は声を荒げて叫んでいる。 「断る。」 俺は当然きっぱり断る。 自分が負けそうだからって女を人質にして拳銃を向けて来る奴の命令なんか聞けるか。 「コイツを殺すぞ!」 男は拳銃を優に向けた。 とことん屑だな! 「俺もお前を殺すぞ。」 俺は冷たい声で言った。 さすがの優も拳銃が突き付けられると顔が青ざめていた。 「コ、コイツがどうなってもいいのか!?」 ホントに根性無しだな。 しかたない。 「お前、自分が優の命を握ってるつもりか?」 「ど、どういうことだ!」 男の顔が引き攣っていく。 「お前が優の命を握ってるんじゃない。優がお前の命を握ってるんだよ。」 「なんだと!?コイツを殺すぞ!」 俺はため息をついた。 そして俺はわざと残忍な感じのする笑みを浮かべた。 「お前が優を殺せば、俺はお前を殺す。」 「なっ!?」 男はかなり動揺している。 「優を人質にしてるからお前はそこで踏ん反り返ってられるんだ。つまり、お前が優を殺せばお前を守ってくれてる物は無くなる。」 「お前!頭おかしいんじゃねぇか!?」 男の動揺はそろそろピークのはずだ。 「馬鹿はお前だ。俺の1番大事な人間を人質にしてるんだ。どういうことか分かるか?俺はお前を許さない。優を開放しても俺はお前を殺す。」 男はすでに声もだせていない。 「さぁ、どうする?」 俺は冷酷な口調で男に問い掛けた。 すると、男は自分の有利を思い出したのか少し強気な表情をした。 「うるさい!俺の有利は変わらない!」 俺はまたため息をついた。
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