傷痕

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「ギャーギャー喚くな。優を人質にとったんだ。お前はどっちにしろ死ぬ。」 こういう場合、1番有利なのは心理的に上位を取ることだ。 相手を動揺させれば必ず隙が出来る。 「お、お前!何を考えてやがる!?」 男が声を荒立てると俺はここ1番の冷酷な笑みを浮かべ、少しずつ男に近づいていく。 「俺の考えてる事を教えてやろうか?まずは優をお前から引き離して拳銃を奪い取り、お前を殺す。だが、安心しろ。すぐには殺さない。急所をはずして人間は何発まで銃弾に耐えられるか実験して最後の一発でお前の頭をぶち抜いてやるよ。楽しそうだろ?」 男は俺が近づいていく事を意識出来ていない。 俺の台詞に全神経を傾けてるはずだ。 全部いい終わると男は絶望感にア然とし、拳銃が優から逸れた。 俺はこのタイミングを待っていた。 一気に男に近づき、優を無理矢理に引き離し、拳銃をもっている方の手の手首を捻り、そのまま男を押し倒した。その衝撃で拳銃は男の手を離れた。 俺はそれを拾い、男の目の前に突き付けた。 んっ!? 安全装置も解除してねぇじゃん! コイツ、ホントに拳銃使えるのか!? 俺は吹き出しそうになるのを堪えながら、安全装置を解除し、撃鉄を起こした。 「形勢逆転だな。お前を殺す。呪うなら優を人質にした自分を呪えよ。」 男は声にならない悲鳴をあげている。 「じゃあな。」 俺は最後に笑みを浮かべると、引き金に力を込めた。 「バン!!!」 男は悲鳴をあげ、失神した。 俺の言葉の銃弾は抜群の効果だった。 ホントに根性ねぇな。 「ホントに殺すわけないだろ?ば~か!」 俺は拳銃の撃鉄を戻し、安全装置をかけると誰もいない方向に投げた。 「諒!」 優が抱き着いて来た。 俺は優を優しく抱きしめた。 「ごめんな。怖い思いさせて。ああするしかなかったんだ。」 やっぱり怖かったんだろう。 優は俺の胸で泣いている。 「大丈夫。アタシ信じてたから。助けてくれてありがと。」 優は泣きながら言った。 ごめんな。 二度とこんな思いはさせない。
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