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「にしても、お前も水臭いよなぁ。なんで俺に言わなかったんだよ?」
達也が不満そうにしている。
「悪かった。無我夢中になってさ。」
「へぇ~。諒が無我夢中なんて珍しいじゃん。」
達也が少し驚いている。
そんなに驚く事かな?
まっ、俺も変わったからな。
「泣き疲れたらお腹減っちゃった!諒と達也君も何か食べる?」
優は財布を取り出すと笑顔で聞いてきた。
「ありがとな。俺コーヒーとパンを頼む。」
「俺、おにぎりがいいな。」
俺と達也は素直に頼んだ。
マジで腹減った。
「分かった!じゃあ買ってくるね!」
優は病室を出ていった。
「お前、昔のこと思い出しただろ?優には聞かれてなかったけど、寝言でアイツの名前言ってたよ。」
いきなり達也が真剣な口調になった。
コイツには昔から隠し事が出来ない。
「まあな、今日みたいな状況はあの時に似てたし、血を見たらな。」
俺はあの時の自分を、今でも許せない。
「あれはお前のせいじゃねぇよ。アイツを止めることなんて誰にも出来なかったんだよ。」
達也の口調は暗い。
「そんなことねぇよ。俺があの時もっと支えてやればよかったんだ。」
俺は拳を握りしめた。
一生忘れることの出来ない傷痕を隠すように。
「それより、いつまで優に黙ってるつもりだ?」
「アイツと優は関係ないから。」
「嘘だね。お前は認めてないけど優にはアイツの面影がある。」
達也に言われて俺はドキッとした。
そんなこと分かってるんだよ。
「いつかは話さなきゃいけない日が来る。いつまでも隠してるのには反対だね。」
達也はいつも正論ばかり言うんだな。
「今のまま一緒にいるのは間違いなのか?」
「俺はそう思わないけどな。少なくとも優と出会ってから諒は人間らしくなったよ。」
達也が俺の問い掛けに答えると、優が帰って来た。
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