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―ある雨の休日
「はぁ…雨か…引きこもろっかなぁ…」
朝食後のコーヒーを飲みながらつぶやく。
「みぃ姉ちゃん、今日暇なん?」
「ん~?まぁ…」
「買い物行きたいねん、車出して~」
「え~…めんどい…」
「いいやん、俺まだ免許ないもん、お願い❤」
床に座り込んで上目遣いにおねだりするのは、4月に大学生になったばかりの弟の正博。
小柄でかわいい弟の上目遣いに私は弱い…
「しゃ~ないなぁ…」
―正博の要望でやってきたのは大型のショッピングセンター
「みぃ姉ちゃん、これ着てみて~」
そう言って渡されたのは、自分では絶対に選ばないきれいめのワンピース
「まーくん、こんなんが好みなん?」
「ううん、でもみぃ姉ちゃん、絶対似合うと思うから」
「ん~じゃあ着るだけね」
そう言ってワンピースを受けとり、試着室に入り着替える。
「どう?」
「やっぱり!思った通りすごく似合う!かわいいよ。」
かわいいなんて言われ慣れない私は恥ずかしくなり、慌てて元の服に着替えなおした。
試着室を出て靴をはいていると、正博がワンピースを持ってレジへと向かう。
「え、ちょっ、まーくん?」
「バイトで初給料もらったから、みぃ姉ちゃんにプレゼント」
「え?いいよ、そんなん…」
慌てる私の手をとり、車へと戻る正博。いつもと違って強引で…弟に手を繋がれてドキドキしてしまうなんて…いつまでも子供だと思ってたのに、いつの間にこんなに大人っぽくなったんだろう。
車の前で手を離した正博がさっきの袋を渡しながら言った。
「俺もうすぐ免許とれるから、そしたらその服着てまたデートしようね、みぃ姉ちゃん。」
今度、このワンピースに合う靴を買いに行こうと決めたのは、弟には内緒…
END
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