弟編

2/2
前へ
/16ページ
次へ
―ある雨の休日 「はぁ…雨か…引きこもろっかなぁ…」 朝食後のコーヒーを飲みながらつぶやく。 「みぃ姉ちゃん、今日暇なん?」 「ん~?まぁ…」 「買い物行きたいねん、車出して~」 「え~…めんどい…」 「いいやん、俺まだ免許ないもん、お願い❤」 床に座り込んで上目遣いにおねだりするのは、4月に大学生になったばかりの弟の正博。 小柄でかわいい弟の上目遣いに私は弱い… 「しゃ~ないなぁ…」 ―正博の要望でやってきたのは大型のショッピングセンター 「みぃ姉ちゃん、これ着てみて~」 そう言って渡されたのは、自分では絶対に選ばないきれいめのワンピース 「まーくん、こんなんが好みなん?」 「ううん、でもみぃ姉ちゃん、絶対似合うと思うから」 「ん~じゃあ着るだけね」 そう言ってワンピースを受けとり、試着室に入り着替える。 「どう?」 「やっぱり!思った通りすごく似合う!かわいいよ。」 かわいいなんて言われ慣れない私は恥ずかしくなり、慌てて元の服に着替えなおした。 試着室を出て靴をはいていると、正博がワンピースを持ってレジへと向かう。 「え、ちょっ、まーくん?」 「バイトで初給料もらったから、みぃ姉ちゃんにプレゼント」 「え?いいよ、そんなん…」 慌てる私の手をとり、車へと戻る正博。いつもと違って強引で…弟に手を繋がれてドキドキしてしまうなんて…いつまでも子供だと思ってたのに、いつの間にこんなに大人っぽくなったんだろう。 車の前で手を離した正博がさっきの袋を渡しながら言った。 「俺もうすぐ免許とれるから、そしたらその服着てまたデートしようね、みぃ姉ちゃん。」 今度、このワンピースに合う靴を買いに行こうと決めたのは、弟には内緒… END
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加