第1章 好きこそ物の上手なれ

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 休み中の美術室の利用者をリストアップするため、最初に向かうのは、顧問の小野先生のところだ。まだ美術室に来ていないということは、職員室に居るに違いない。職員室は2階だ。 「失礼します。小野先生はいらっしゃいますか?」 軽いノックをして、職員室に入る。何度来ても少しばかり緊張してしまう。 「おぅ立木、どうした?小野先生なら今掃除当番で、焼却炉のとこに居るぞ。」  調度近くにいた西原先生が応対してくれた。  焼却炉は、2号館を南へ進み、体育館を超えさらに南、グランドの西側に位置する施設だ。だいたいどの辺かわかってもらえただろうか?つまり職員室室からは遠い。面倒だ。 「いつ頃お戻りになられますか?」  できれば行きたくない。 「普段は直接美術部の方へ向かうみたいだから、用事がないかぎりここへは戻って来ないと思うぞ。」  仕方ない、美術室へ戻るか。 「そうですか、ありがとうございました。では、失礼します」 「そうだ、ちょっといいか?」礼を言い、職員室を後にしようとすると、西原先生は思い出したかのように俺を呼び止めた。「クラスの委員長やってくれるか?」  そういうのはクラスで決めることですよね… 「そんなもん決めるために、わざわざ時間割くのももったいないだろ。生徒会長のお前がやるなら、誰も文句は言わんだろ。じゃあよろしくな」  委員会を決定したり、クラスでの話し合いはカリキュラムに含まれていると思うのですが。時間削って何するつもりですか?ドッヂボールですか?意見を聞こうとしたところは褒めてやる。今その精神は何処へ行ってしまったのだろう。何一つ反論する間もなく、決定事項となる。生徒会長に続き、クラス委員長の称号まで得てしまった。 「お兄ちゃん委員長さんなんだぁ。すごぉい」  さっきまで背後霊の様になっていたのぞみが称賛の声をあげる。褒めてくれるのはありがたいが、職員室でまでお兄ちゃんと呼ぶな。 「お前の妹か?」  おかげで見事に、西原先生に誤解を与えたようだな。 「違いますけど、妹みたいなものです」 「ふーん、オタクのロマンってやつか?」  すみません、意味がよくわかりません。 「いえ、違います。失礼します」
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