第1章 好きこそ物の上手なれ

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俺の絵と、粘土の共通点はなんだ?何も思いつかず、いつのまにか立ち上がり、うろうろしていたのぞみにも聞いてみることにした。暇そうだしな。 「そういえば、お兄ちゃんの絵ってどんな絵なの?」 いまさらな質問だな。そういえばどの絵がなくなったか言ってなかったっけ。 「香織の肖像画だ」 いつか香織にプレゼントしようと、こっそりこつこつ描いていた俺の最高傑作だ。 あとはメッセージを書き込むだけだったのに、まさかこんなことになろうとは… 「わかったぁ!」 人差し指をピンと立て、満開の桜にも劣らぬ程の笑顔を見せる。 「お兄ちゃんの絵とかけまして、先生の粘土と解きます」 そのこころは? 「どちらもかおりんが重要です」 そういうことか…多分、いや絶対関係ないな。 「お前、さっきまで俺のなくなった絵のこと知らなかったんだよな」 突然、雷に打たれたような衝撃が走った。全ての謎が一つに繋がった。 「わかったぞ、事件の真相が」 解決はもうすぐだ。2人が戻り次第、名探偵立木広和の推理ショーの始まりだ。 「本当?犯人は誰なの?」  のぞみが急かすが、まだなにも言わない。容疑者を揃えてから推理を披露する、という定石に則らなくては天才的推理が活きないだろ。 「教えてよぉ、意地悪ぅ~」 「2人が戻って来るまで、もう少しだけ待ってくれないか?」 「待てない~、ねぇお兄ちゃん、お願い」 上目遣いで媚びるのぞみ、チワワみたいなウルウルした目で見られては耐えられそうにない。警察にでもなればいい、取調べで大活躍だ。少なくとも俺なら5分以内で自白してしまいそうだ。毒舌コンビはまだか?早く帰って来てくれ。5分以内に。
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