第1章 好きこそ物の上手なれ

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「やぁ、生徒会長様。今年も相変わらず不振のようだな。たまにはパターンを変えたらどうだ? マンネリはよくないぞ」  席に戻ると、俺の親友を称する加藤晶が俺を迎えた。去年から同じクラスで、付き合いは古くないが、不思議と席が近くなってしまう面倒なやつだ。 「俺は変わらない思いを伝えているんだ。とってつけたように美辞麗句をならべたりするのは、俺のポリシーに反する」  晶の呼び名からもわかるように、俺こと立木広和は頭脳明晰、容姿端麗、品行方正を自負する、我が高松学園の生徒会長なのだ。 「今年は生徒会に部員が来るといいな。そしたらお前なんか、すぐにでも生徒会長を下ろされるのにな」 「失礼な、俺という偉大な存在が影響して敷居が高すぎると誤認されてるだけだ」  見下すように笑いかける晶の後頭部に軽く拳骨を落とす。上手く加減できたかわからないが。  実際のところ生徒会長といっても、人数不足により廃部寸前となってしまった生徒会執行部のたった一人の部員であるため必然的に与えられた役職にすぎないのだ。兼任で会計、書記の役職も与えられている。  そもそも、生徒会執行部は部活動として、希望するものたちの集まりだったが、現在の希望者0という事態により、すべての部活動の部長が所属する部長会の代表者を生徒会執行部員とし、生徒会長を兼任させるという苦肉の策をとっている。  そして類い稀なる才能をもつ美術部部長の俺が、その役をかって出ることになったのだ。  当然崖っぷちの生徒会執行部に生徒から憧れも、教師と同等の権限もない。校内に知っている人の方が少ない影の組織なのだ。普段は香織と同じく、美術部員の一人として活動しているため、俺が生徒会長であることはあまりしられていない。念のため言っておくが香織を追いかけて美術部に入っている訳ではない。美術部へ先に入ったのは俺だ。  この学園では兼部は禁止されているため、俺は登録上、美術部員ではなく、生徒会執行部員で、美術部部長で生徒会長という訳のわからない立場になっている。
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