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河野は隣に立つ武士を突き飛ばすと、足首を捲り拳銃を突きつける。
いや、河野ではなく彼に化けた組織のエージェントだ。
「いやぁ!」
九条は悲鳴を上げその場に踞るのだが、エージェントに首根っこを捕まれ人質に取られてしまう。
「其処の若いの、見事な推理だったがまだまだ青いな。俺を疑っていたのなら、最初に所持品検査しておくべきだったのさ。そうすれば、無駄な死人が出なくても済んだだろうに」
後退りしながらも男はドアノブに手を伸ばす。
九条の肩に腕をまわし、銃口はこめかみに当てられていた。
「イタタタッ……突き飛ばすんなら突き飛ばすって言えよ馬鹿。この、自分の無能さを棚にあげるしか出来ねぇ屑野郎が」
腰に手をあてがい立ち上がる武士は、男に向かって悪態をつく。
それに対して男は、フフと鼻で笑った後で、ドアノブの鍵をカチャリと開けるのだ。
「残念だが俺は逃げさせて貰う。その前に、ひとつだけ忠告しておいてやる」
耕介は「何をです?」、と聞き返すのだが、その顔に焦りの色はまったく窺えなかった。
『逃げられるものなら逃げてみろ』
そう言いたげである。
「――お前達は何も分かっちゃいない。俺の所属する組織は、何百年もかけてこの国を造ってきたんだ。言うなれば、俺達こそ正義。その邪魔をするなら、何者であろうと消す。これが組織の方針なんだよ。例えこの国の司法であろうとも、俺達を裁けやしないのさ」
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