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良い映画を観終えた後の、一種の感動にも似た感情。
その内容が如何に浮世離れしていたとしても、観る者に与える圧倒的世界観。
これが伝統によって語り継がれた物語であるなら、僕の求めている答えは間違いなく此処に在るのだと思う。
そう確信した時、僕の脚は殺人現場を目撃したあの恐怖とは、また別の震えによってその場にへたり込んでしまったんだ。
(凄い……でも、この演目内容に疑問を持った人はいったい何人いるんだろ? もし気付いてるなら、それがこの国の歴史上重要な意味を含んでるって事知ってるのか?)
僕は思ってもいなかった幸運に、少し有頂天になってたのかも知れない。
何か手掛かりだけでも――
そう思いこの廃寺に足を運んだだけのつもりが、いきなりその核心に触れてしまった。
ここまでの話しだけだと何を言っているのか見当もつかないだろうけど、僕は目的の場所、つまり『首無村』に近づきつつあるって事さ。
そうした自信が僕を少しずつ無防備にさせてゆく。
気がつけば文美さんは、同じように狐面を被った女性達と何やら話し込んでいた。
浴衣の柄だけを見ても、まだ若いか文美さんよりちょっと下と言ったところだろうか。
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