四.【夏祭りの後で】

36/54
前へ
/517ページ
次へ
 僕は今しがたの仏舞にどのような由来があるのか確認したくて、女性達の輪に加わる事にした。 彼女達はそんな僕を温かく迎え入れてくれる。 「あの、お邪魔でなければお話を聞かせて頂けませんか? 僕の名前は――」 「あぁ、佳奈ちゃんの知り合いの人でしょ? いま文美さんから聞いたとこなんよ。じゃけどええ声しとるなぁ。若い男の匂いがするわ」 「手ぇ出しちゃおえりゃあせんで。佳奈に怒られるけぇな」 「フフフ……そりゃそうじゃ。佳奈より先に手ぇ出したらバチが当たるわ」  声が若い。五人組の女性達は僕よりは歳下じゃないかと思う。 クスクスと笑う声は女子高生のそれと変わりなく、団扇をクルクルと回す仕草は、幼くも大人の色気に通じるものがある。 でも、素顔は分からない。狐面の奥から僕を品定めしているような、そんな視線を感じた。 きっと僕がお決まりの挨拶をするまでもなく、彼女達は僕の話題で盛り上がっていたんだろう。 嬉しいよいな、恥ずかしいような、少しだけ顔が火照った。 後でひょっとこの面にお礼を言ったのは内緒だ。 僕は照れ隠し代わりに質問してみた。 「若い男って……この村にも僕くらいの男の人はいるでしょ?」   友達の後ろに隠れていた一人がポツリと呟く。おさげ髪の小柄な女性だ。
/517ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1230人が本棚に入れています
本棚に追加