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冗談なのか本気なのか、文美さんははだけた太股をわざとチラつかせてきた。
欲情に燃える女性の姿が其処にある。
僕は別の意味で危機感を感じたが、ちょっとした期待も含まれていたと思う。
ただ、そうした状況に遭遇したなら、間違いなく逃げ出すとは思うけど……。
僕は身悶えしている文美さんを見ないように、五人の若い狐に尋ねた。
「この中でさ、さっきの踊りに詳しい人いる? どんな事でもいいんだけど、分かってる事あったら教えてくれないかな」
五人は何やらヒソヒソと相談を始めたかと思えば、僕の周りに群がり匂いを嗅ぎ出す。
一番背の高い髪を団子にした狐が、僕を見上げるようにしてこう言ったんだ。
「――お兄さん、何か匂う」
他の狐達も身体中を舐めるようにして鼻をクンクンと鳴らす。
(バレたのかな、失禁した事……)
ジーンズは半分乾いてはいたけど、匂いだけは残っていたんだ。
急に恥ずかしくなった僕は、今すぐこの場を逃げ出したくなった。
でも、そうじゃない。
「町の匂いがする……。お兄さんって、余所の人?」
「えっ? いや僕は……」
彼女達は田舎には無い何かを感じ取ったのだろうか。
失禁がバレてないと知り安心したけど、文美さんが言ったあの言葉が不意に頭を過る。
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