四.【夏祭りの後で】

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『祭りどころの騒ぎじゃのうなるけぇ』  何故、文美さんはあんな事を言ったのか―― 僕が東京から来たからといって、何か問題でもあるのか? この村の住人達は何故余所者を嫌うんだ? やはり、アレが隠された土地だからなのか?  幾つもの疑問が僕に嘘をつかせる。仮に真実を語っていたなら、彼らのような末路を辿っていたかも知れない。 この時はそれを知る由もなく、単なる直感がそうさせただけだった。 「――佳奈とは知り合いでね。今夜はお祖父さんの処に泊まる事になってるんだ」  団子の狐は素直にも納得した様子で団扇を扇ぐ。 「ふうぅん……。やっぱり、佳奈が唾つけとんじゃ。せっかく若けぇ男に知り会えたゆぅのに、少し残念じゃわ」 「ははは、別に僕達そんな関係じゃ……」 「そうなん? じゃったら私とええ事せん?」  団子狐は胸元をはだけて誘ってくる。余りに露骨な誘いに、気付けば僕は後退りしていた。 「ククッ……みんな見てみぃ、こん人照れとるわぁ。お兄さん可愛いなぁ」  五人の狐達は腹を抱えて笑っている。 (勘弁してくれよ。此処へ来てからからかわれてばかりだ……)  僕はひょっとこの面を正しながら質問の返事を求めた。
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