1230人が本棚に入れています
本棚に追加
『祭りどころの騒ぎじゃのうなるけぇ』
何故、文美さんはあんな事を言ったのか――
僕が東京から来たからといって、何か問題でもあるのか?
この村の住人達は何故余所者を嫌うんだ?
やはり、アレが隠された土地だからなのか?
幾つもの疑問が僕に嘘をつかせる。仮に真実を語っていたなら、彼らのような末路を辿っていたかも知れない。
この時はそれを知る由もなく、単なる直感がそうさせただけだった。
「――佳奈とは知り合いでね。今夜はお祖父さんの処に泊まる事になってるんだ」
団子の狐は素直にも納得した様子で団扇を扇ぐ。
「ふうぅん……。やっぱり、佳奈が唾つけとんじゃ。せっかく若けぇ男に知り会えたゆぅのに、少し残念じゃわ」
「ははは、別に僕達そんな関係じゃ……」
「そうなん? じゃったら私とええ事せん?」
団子狐は胸元をはだけて誘ってくる。余りに露骨な誘いに、気付けば僕は後退りしていた。
「ククッ……みんな見てみぃ、こん人照れとるわぁ。お兄さん可愛いなぁ」
五人の狐達は腹を抱えて笑っている。
(勘弁してくれよ。此処へ来てからからかわれてばかりだ……)
僕はひょっとこの面を正しながら質問の返事を求めた。
最初のコメントを投稿しよう!