1230人が本棚に入れています
本棚に追加
「それで、さっきの踊りについてなんだけど」
笑っていた彼女達は突然口ごもる。まるで掌を返したような反応に、僕は期待を膨らませこう続けた。
「昔の人は、あの踊りを通して何を伝えたかったんだろ。僕にはとても興味深い内容だと思えるんだけど、君達はどう感じたのかな? 知ってる事があれば何でもいいから教えてよ」
返ってきたのは予想通りの答えだった。彼女達が何か知っていて隠しているならば、間違いなく『知らない』と応えた筈だ。
そうでなければ、余所者を嫌う理由が分からない。
もし本当に知らなくても、踊りを見て受けた印象くらいは話して当然だ。
おさげ髪の狐が何かを言いたげに身体をくねらせる。
「君、何か知ってるの?」
一同の視線がおさげ髪に集まる。文美さんはと言うと、この際見てみぬ振りをした方がよさそうだ。
ハァハァと独り息を荒げて身悶えしている。
「――知らない。けど、佳奈のお祖父さんなら何か知ってるかも」
僕は内心ガッツポーズをとりほくそ笑んだ。
彼女は確かに知らないと言った。
それは何かを隠している証拠だと思う。
たとえ僕の推察が間違っていたとしても、それに繋がるヒントを得た。
佳奈のお祖父さんは何か知ってるんだ。
最初のコメントを投稿しよう!