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坂井はもう一度引き出しを閉じるのだが、奥まで押し込む事が出来なかった。
何かが引っ掛かっている為だろう。
今度は引き出しを取り外し覗き込んでみる。
(あれは手帳か……?)
中の物を取り出す際に、誤って引き出しの奥に落としたのか。
おそらくは違う。
手帳はガムテープで止められていた。
警察の仕事のなんと杜撰なことか。
そんな事を考えながらも、坂井は手帳を取り出すなり目を通し始めるのだった。
(旅行日記だって?)
冒頭に書かれた文字と日付から、先ほど老人から聞いた旅行の手記であると理解出来る。
自分の中で好奇心という名の欲望が湧き上がり、坂井はそれを抑える事が出来なかったようだ。
まるで何かにつき動かされているかのように。
室温が急激に下がり身震いをする。真夏だというのに寒波にやられたようなものだった。
これも天候の仕業だと自分を納得させたところで――
何者かの視線を感じて後ろを振り返る。
大家以外の何者かが、この部屋に居るのだと、そう思われた。
ところが、部屋を注意深く見回してみるのだが、梱包作業で背中を向けている老人以外には誰もいなかったのである。

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