おばあちゃんとおじぃちゃん。

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函館にいるおばあちゃんが入院した。 私は高校生になったばかりだった。 親は入院したとしか教えてくれない。 どんな病気なのか、 どんな状態なのか、 少しも教えてくれなかった。 それから、函館に何回も行った。 小学校までは 1年に二回。 夏休みと冬休みに1人で電車に乗って行った。 中学に入ってからは、 部活があってなかなか行けなかった。 それでも、1年に一回は、必ず行った。 でも、おばあちゃんが入院してから、頻繁に函館に向かった。 でも、ばあちゃんの病気のことは教えてくれなかった。 病気の名前が知りたかった。 病気のことを知りたかった。 ばあちゃんのことが、 知りたかった。 数ヶ月して、ばあちゃんの容態は良くなった。 私は安心した。 病気が治ると思った。 だけど、久しぶりに会ったばあちゃんは、 少し弱々しかった。 物があまり食べられない。 杖がないと歩くのが辛い。 見ているのが、少し辛かった。 ばあちゃんはいつも、人に迷惑かけることだけは嫌った。 ばあちゃんはいつも、ちゃんとお化粧して、お洒落して、キレイだった。 ばあちゃんに会いに行くと、いつもお小遣いをくれた。 いつも、お土産代を別にくれた。 いつも、いくらを沢山用意して待っていてくれた。 とてもマイペースでずっとしゃべっているおじぃちゃん。 おじぃちゃんを止められるのはおばあちゃんだけだった。 おじぃちゃんには、息子の私のお父さんも、少しうんざりしていたみたいだった。 とにかくおじぃちゃんはよく喋った。 けど函館弁だし、めちゃくちゃだし、3割程度しか話の内容がわからない。 だから私はテレビを見てた。 でもおじぃちゃんは話しかけてくる。 うるさいので適当に返事して流していたら、 お姉ちゃんが違う大学に行ってることになってた。 まぁあとから訂正したんだからいんだけどね。 テレビを見ている時に限って、おじぃちゃんは話しかけてくる。 そしておばあちゃんはいつもそれを止めてくれてた。 「りっちゃんテレビ見てるんだから後にしなさいよ、お父さん。」 そうして私はまたテレビの世界に入って行く。
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