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だが、しかし、流石に彼女も食べない訳にはいかないらしく、フォークに付いた螺旋を勿体なさそうに口に運ぶのだった。
そして、それを繰り返すこと数回、と言っても彼女は一回毎にくるくるに精を出す為、やっとのことで食事の時間が終わった。
俺は食器を流し台に運ぶ。そしてやはり二人分の食器を洗うのだが、今回は雛さんが手伝ってくれたので大分と早く事は済んだ。
その後は、また二人してリビングのソファに腰を下ろしくつろいでいた。
「あ、そうだ。遷里!」
暫くして雛さんが呼び掛けてきた。
「また鹿の話しでもしろってのかい?」
「そうじゃないわよ。
ほら、遷里って私の家に来てから殆ど外に出てないじゃない?
だから外の空気を吸いに行きがてら散歩でもしてきたらどうかなって……。」
確かにここに来て外に出た記憶と言えば家の側の花壇に水をやった時くらいだ。
「確かにそうだな。」
「でしょ?
取り敢えず暫くはここに住むのだから、周りの地理くらい把握しておいて損はないわよ。」
「そりゃそうだ。
じゃあ、ちょっとふらっとしてくるよ。」
「ええ、行ってらっしゃい♪
また、遭難しないでね。」
何か一言多い気がするのだが、おかげで俺はドアのところで危うくコケてしまいそうになった。
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