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「ハァッ……ハァッ……!!」
闇の中を、少女が走る。
何が起こっているのか。今のこの状況は現実の出来事なのか。
それは彼女にもよく分からない。
1つだけ分かる事と言えば、
「ここから一刻も早く逃げなければ、自分は殺される」。
ただ、それだけであった。
(何で……!?どうして!?何であたしが…!?)
『アレ』は人ではない。あんなものがこの世にいるわけがない。
ピチャ……ピチャッ……
「!!!」
少女は振り返る。
水溜まりの上を歩く様な足音。聞こえる。『アレ』が追って来ている。
「ひっ…」
逃げなければ。より速く、より遠くへ。
視界が涙で滲む。だが、そんな事を気にしている暇は無い。
ピチャッ…ピチャッ…ピチャッ…ピチャッ…ピチャッ…
足音がピッチを上げた。死が、死が近づいてくる。
「いやっ…いやぁっ…!!」
その時、まるで彼女の運命を嘲笑うかのように、彼女の履いている靴の紐が突然切れた。
「きゃっ」
バランスを崩し、うつ伏せに倒れる少女。彼女を追う『何か』は、獲物を狩るには絶好の、その機会を逃す事はなかった。
ピチャッ…ピチャピチャピチャピチャピチャピチャピチャピチャピチャピチャピチャピチャピチャピチャピチャピチャピチャッ
「いや……いやあぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
少女の叫びは、闇の中へと、掻き消された……
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