第壱章【黒い烏】

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付着した皮膚の破片を振るい落とそうと手をヒラヒラさせる青年。 「つまり犯人は…この娘が最後に目撃された昨日の夜8時から、 遺体の発見された今日午前5時の間に、 何らかの方法でこの娘をカピカピの干物にしちまったっつう話です。」 「まともな人間の仕業じゃあねぇな…」 「てか、人間技じゃ無いっしょ?っと…」 初老の男はポケットから引っ張り出した携帯灰皿に煙草の灰を落とし、青年の手からファイルを取り上げた。ファイルのページをめくると、斗賀野と同様の死を遂げた人間の情報を纏めたファイルが数枚顔を出す。 「これで…7人目。…か。」 「出身、年齢、血縁、職業見事にバラバラ。共通点と言えば死に方と、死んだ場所が真宿っつう事ぐらい。完っ全な無差別殺人ですわ。」 「無差別殺人……」 ファイルを手術台の上に放り投げ、ふぅーっ、と煙を吐く初老の男。 「ダンナ、今更だけどここ禁煙っスよ」 「あ?……あぁ…」 青年にサラリと忠告され、初老の男は咥えていた煙草を携帯灰皿に突っ込む。
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