静かなる姫君

2/20
前へ
/300ページ
次へ
「初音を嫁に出すことになった」 「それは……おめでとうございます」 衝撃から立ち直った晋次は言った。 自分の声が妙に上ずってわざとらしく聞こえた。 「越前の神山家だ。殿からの御命令で、もう話しはまとまっているというわけだ……。 ついては、晋次、」 江雪は晋次の手を握って、 「お前を護衛隊に加える。初音の側に居てやってくれないか。 お前は初音を昔から知る数少ない者の一人だ……」 江雪は嗚咽を漏らした。 「何でもいい。話してやってくれ。一番近くで初音を守ってやってくれないか。 これは私の、父としての頼みだ……」 江雪は眼を赤くしていた。晋次は何と言っていいやらわからず、ただただ手を握り返した。 「いかんな…… どうも歳をとると子がますます可愛くなる。特に娘はな、 晋次、やってくれるか?」
/300ページ

最初のコメントを投稿しよう!

229人が本棚に入れています
本棚に追加