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「初音を嫁に出すことになった」
「それは……おめでとうございます」
衝撃から立ち直った晋次は言った。
自分の声が妙に上ずってわざとらしく聞こえた。
「越前の神山家だ。殿からの御命令で、もう話しはまとまっているというわけだ……。
ついては、晋次、」
江雪は晋次の手を握って、
「お前を護衛隊に加える。初音の側に居てやってくれないか。
お前は初音を昔から知る数少ない者の一人だ……」
江雪は嗚咽を漏らした。
「何でもいい。話してやってくれ。一番近くで初音を守ってやってくれないか。
これは私の、父としての頼みだ……」
江雪は眼を赤くしていた。晋次は何と言っていいやらわからず、ただただ手を握り返した。
「いかんな……
どうも歳をとると子がますます可愛くなる。特に娘はな、
晋次、やってくれるか?」
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