静かなる姫君

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「ほらあ、こっちこっち」 「お前なあ……」 晋次はちょっと説教でもしてやろうかと思ったが、初音はさっさと暗い茂みをぬけていく。 「ねえ晋次気付いた?ここ鞍馬山だよ」 気が付かなかった。 通りですいすい進めるわけだ。 この山は昔何度も遊びに来ていたのだ。 「ほら、この場所」 晋次と初音は崖の側の野原に出ていた。 ここでよく遊んだものだ。 暗くてあまり見えないが、ここからは谷の集落や山々がよく見える。 今は暗闇の中にぽっかり浮かんだ三日月の微かな光が、二人を照らしていた。
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