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あたしは浅く笑った。
和幸さんはそこそこ大きな会社の社長さんだった。
口癖のように‘菜月’を秘書にと誘っていた・・・らしい。
「あたしが秘書になったら、和幸さん仕事にならないでしょう?」
からかい口調で聞くと、和幸さんは小さな子供のように口を尖らせて反論する。
「菜月は私の仕事している姿を知らないから。仕事の顔は別物だよ。」
「あら、あたしも仕事の時は別人よ。スケジュールパンパンにして、二人きりの時間が減っちゃう。」
「それは困る。」
でしょう、と囁いて。
あたしは和幸さんの布団をかけ直した。
「このままでいいのよ。このままで。」
あたしは呪文でも唱えるように言い聞かせた。
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