わかれ

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開け放たれた木枠の窓から、すうっと冷たい夜の高原の風が吹き込んでくる。いつも振り返ってお帰り、を言ってくれる白髪頭の優しい祖父は、仕事をしている机の上に突っ伏して、口元を緩めたまま目を閉じていた。 「じいちゃん……?」 手元には掘りかけの小さなエルカの木で出来た壁飾り。雪解け水が小川を流れる今の季節になると草原の至る所に可愛らしい空色の花を咲かせる、アイリアという植物の花の模様があしらってあった。きっと、街の何処かの小さな娘にでもやるつもりでいるのだろう。 「風邪ひくよ、起きて」
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