であい

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祖父の遺品を整理し始めて三日経った。 捨てなければいけないものは何処にもなかった。しかし、僕はいずれここを出ていくつもりだ。祖父の古い服や作品、何十本もある彫刻刀やノミ、木材を全部引き取って町にある家へ帰ってもいいが、屋根裏部屋を埋め尽くすほどの量の木彫り細工を置く場所など幾ら頭をひねっても出てこなかった。ミミはきっと大丈夫だろうけど。 祖父を慕う人は町に大勢いる。特別に良いと感じたものを幾つか残して、後は祖父の作品が好きな人にあげてもいいんじゃないか。その方が、置き場所に困っている僕よりも大切にしてくれるだろうと思い立ち、大きな木の台車を家の裏から引っ張り出して、祖父の作品を大きいものから一つずつ、台車一杯に丁寧に入れる。屋根裏に落ちていた長い縄で木を傷めないように括り、落ちないように固定した。町に戻るのはあまり気分が乗らなかったが、思い付いたらさっさとやってしまいたかった。 それから僕は家に入り、パンと果物を背負い袋に一つずつ入れた。荷物を背負い、万が一の修正の為に彫刻刀とノミを入れた別の袋を台車の隙間に押し込み、太い取っ手を押して二年ぶりに町へちゃんと帰ることにした。勿論、ミミも一緒だ。
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