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一真の腕に抱かれて尚、子猫は母親を求め哀しげに鳴き続ける。その子猫の姿に一真は堪らなくなり、自分の自転車のカゴに子猫を置き、母猫の亡骸に近づく。
せめて、家の庭に埋めてやろうと考えたのだ。
だが容易なことではなかった。猫好きな一真だからこそ、変わり果てた母猫を見るのが辛かった。これにはさすがに躊躇してしまった。そうしている内にこの道路を通ろうとするジープ。猫の亡骸が目に入らないのか減速も無く、回避する気配も無く前進してくる
一真「......ッ!!待ってぇッ!!!!」
案の定、運転手はその巨大なタイヤで母猫を
一真は瞬時に背を向け、力一杯耳を塞ぐ
それでも微かに聴こえた..........無情にもタイヤの下敷きになる鈍いイヤな音が
一真は二度と母猫を振り返らなかった......振り返ることなど......できなかった
一真「...............」
一真はカゴの中で母を呼び、鳴く子猫を再び抱き上げる
ミィー、ミィー、
一真「ごめんな.......助けてやれかった.......ごめんッッ!!」
鳴き続ける子猫を一真は抱きしめ、ボロボロ涙を流す
そのころ、金田家では一真と同様に毎日のように顔を出す馴染みの雅人とゲームをする慶次の姿
慶次「一真君、遅いな~」
雅人「あぁ?大丈夫だって、すぐ来るっしょ」
トゥルルルルル......トゥルルルルル
慶次「?....雅人、ちょっとタイムね。電話だ」
雅人「一真からじゃね?、今から行くって電話でしょ」
慶次「......かな?」
慶次は玄関にある電話機に向かう
カチャッ
慶次「はい、金田です......あ~一真君?遅いよぉ?......ん?.....どうした?......うん.......うん............え!?」
電話に応答する慶次の様子がおかしいと、雅人は聞き耳を立てる
慶次「........そっか.......ううん大丈夫.......うん、わかった。またね」
カチャッ
受話器を置く慶次は心配そうな顔を浮かべる
雅人「なんだって?一真......」
雅人も不安そうに慶次に近づく
慶次「...........」
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