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一真は子猫を抱いたまま、そこから動くことができなかった
絶え間無く鳴き続ける子猫の声は、次第に少年に罪悪感を植え付けていった
あの時、怯まず母猫の亡骸を家のほうに引き寄せていれば.....と
たかだか9歳の少年は、この日、初めて自分の行いに後悔した
慶次「一真君」
一真の後方から馴染みのある声が聞こえる。
一真「慶ちゃッッッッ!.........」
慶次の立つ方向には母猫の亡骸がある事をとっさに思い出し、振り向くことを止める
一真「.......なんだ、来てくれたんだ」
慶次「.......気になっちゃって..............この猫か.....」
慶次は一真が確認した時よりも損壊の激しい「元、猫」を見る
雅人「あ~あ、なんだこりゃ.......グッチャグチャだぁ」
慶次と一緒に駆けつけた雅人が頭をポリポリかきながら無神経な発言をする
慶次「雅人ッ!!」
雅人「........あぁ、悪い」
一真「雅人も来てくれたんだ.......ありがとな」
平常を保ったふりをしながらも肩を震わせ、すすり泣く今まで見たことのない一真の姿に雅人は動揺する
雅人「お.......おう」
一真「本当はさ、その猫を庭に埋めてあげようと思って、引っ張ってこうと思ったんだけど........できなかったよ............その猫の......お腹から.....」
慶次「言わなくていいから一真君......猫が好きな人には、もう触ることも出来ないのは見てわかるから」
慶次の言葉に一真の肩の震えはより一層激しくなる
雅人「..........でも、何とかしてぇんだろ?」
一真「.........できれば」
雅人は溜め息をつきつつ、自分のジャケットを脱ぐ
慶次「?......何してんだ?雅人」
雅人「いいから慶次は庭に穴掘れよ」
一真「...........雅人!?」
雅人「見るんじゃねえッ!!.............見るなよ?一真」
雅人はジャケットを母猫の亡骸に被せる
慶次「........お前」
雅人「ほら、とっとと掘れって。オレは別に猫好きでもなんでもねえからよ。運ぶのはオレがやってやる.......だからさっさと掘れ」
慶次「.........一真君、シャベル借りるよ?」
一真「.......オレは?」
雅人「お前はそのガキ猫抱いて目ぇ閉じとけ..........すぐ......終わっから」
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