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10分後、母猫の埋葬は終了した
雅人「いや~、一真の庭が広くて助かったぜ。眠る場所ができてコイツも一安心だろ」
一真「雅人、お前そのジャケット......」
雅人「あ?別に、洗えば大丈夫だべ」
血溜まりのできたデニム生地のジャケットを何事も無かったように羽織る雅人
一真「.........ありがとう、雅人、慶ちゃん.......ホント.........ありがとう」
また涙ぐむ一真の肩を二人はポンと叩き、歯を見せて笑う
慶次「一真君らしくないぞぉ?」
雅人「なぁ?いつもは強気強気で押し通す一真様が、なんて顔してんだよバーカ」
一真「...........チッ、うるせえし」
涙を拭う一真を見て二人は安堵の表情を見せる
慶次「だけど......その子どうするのさ」
雅人「そうだよ。お前の父さん飼うこと許さないだろうが」
実は一真は、それが気掛かりだった。一真の父はペットを飼うことを頭ごなしに反対する人だ。過去、何度断られてきたか知れない
だが
一真「拝み倒すよ。今度だけは父さんに飼うことを許してもらうように死ぬ気でだだっ子してみるよ」
慶次「そっか.......今日はもう遅いから帰るね」
雅人「オレも帰らねえと........ババァがうるせえからよ」
一真「自分の母さんをババァとか言うなってッ!!」
雅人「ハイハイ........とりあえず明日、どうなったか聞かせろよ?」
一真「わかった..............二人とも、今日はホントにありがとうね」
一真は子猫を抱きながら二人に深々と頭を下げる
雅人「やめろよ気持ち悪ぃ。んじゃ明日な」
慶次「また明日ね」
一真「うん。じゃあね」
二人は自転車に乗り、一真の元から去っていく
一真「...........ありがとう」
遠くの二人の背に向かい、ボソッと礼の言葉を口にする。子猫を見ると、鳴き疲れたのか、一真の胸の中で眠ってしまっていた
一真「.......今日からオレがお前の母親代わりだ......勘弁してくれなぁ」
一真は子猫を優しく抱き包む
その日の一真と子猫を照らす夕焼けは、いつにも増して、綺麗に輝いていた
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