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「バ、バンキッシュね。わかったよ。で、パドたちはこの国の軍隊なんだな」
「はッ!我々は独立国家バンキッシュ国軍特殊部隊、第88小隊隊員一同であります!」
それにしても日本語うまいよな。というかみんな日本語しか話してない。襟元とかに自動翻訳機とかを常備しているのだろうか?
なわけないか。いや、だとすれば……
俺の脳裏に嫌な予感がチラついていた。
「おい、そろそろいいか?テメェの要求……目的はなんだ?」
案の定しびれを切らしたルビーはたまらず割り入ってきた。
要求って……そんなの決まっている。
「俺を街まで連れて行ってほしい。そして家に帰れるよう最大の協力をして欲しい」
そして俺の要求にルビーは驚いた表情を見せている。
「待て待て、そんな事か……?」
「そんな事って……そうだな、あと……できれば身の安全も保障してくれると助かる」
「そりゃ当然だろ。アタシがお前の第一保護者、つまり『保護責任者』なんだからな……ったく、お前ホントに希少種かよ」
そう言ってルビーはショートカットの赤髪を掻きむしるが、パドが口を開く。
「ルビー軍曹、横槍で申し訳ないのですが、クロさんは希少種ながらあの過酷な状況下にいたのです。今はそれくらいにしましょう」
「……ありがとう、パド」
俺のその言葉にパドは驚き、ルビーは大きな溜め息をついた。
「あのなあクロ、お前が普通じゃない事はよーくわかった。ホントなんも知らねーんだな」
「……ごめん」
「そうじゃねーよ」
――――……??
「少なくとも希少種は『ありがとう』や『ごめん』なんて言葉を軽々しく口にしねーんだよ、バカタレ」
そうどこか安堵の表情を浮かべ、呆れたように小さく笑っていた。
「るるる、ルビー軍曹!その発言は――――!!」
……。
まだまだ分からない事だらけだが、この話し合いの収穫は大きかった。なんとなくだが色々見えてきた。
恐らく『希少種』ってやつはこの国である程度の権力を持っている存在なのだろう。そして少なくともルビーは嫌いだと言っていた。もしかしたらクォーツも同じ気持ちだったのかもしれない。
そして俺がその一人だという事。何かの分母の中で希少な存在なのは間違いない。でも血の見た目なんて誰でも一緒だと思うが、血や傷口のどこを見て判別できるのかは謎だ。
一体なんなんだよ……希少種ってのは……。
ただ、なんとなく、このバンキッシュという不思議な国に対して俺の中で最悪の仮説がひとつだけあり、そこに向かって着実に近づいている気がした。
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