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見知らぬ土地のど真ん中。巨大な蟹に殺されそうになった俺は『ルビー・ガレス』という赤髪の少女に命を助けられた。
そしてその部下である伍長の『パドレント・アグラヴェイン』との出会いにより、希少種として保護される事に。
身の安全と街までの警護。突然俺に与えられた謎の権力によって今までの苦労がウソのように要望が受け入れられていくのだった。
そして俺は今、小型の軍用車、その荷台部分にいた。
そこは6畳ほどのビニール製の屋根と壁に囲まれた荷台。
いや、荷下ろし口から見て左右にボロボロのソファーが備え付けられた護送車とでもいうのか。
向かい側にはソファーの上で目を瞑りあぐらをかくルビーと、小銃の手入れをしているパド。車内は壊れた洗濯機のような振動が尻を刺激し、道の悪さが伺えた。
俺はひどく疲弊したこともあり、無言でソファーに沈み込んでいた。
「ほら、ここだ。ついたぞ」
停車した車内、ルビーは外を見て車内でカツカツに立てかけてあった斬馬刀を手に取る。
「あ、ああ!すまないな……わがまま言っちまって」
「わがままって……ったくコイツは。ここで間違いねーんだな」
「たぶん……そうだと思う。自信はないけど」
ルビーはそんな俺を見て呆れながら小さく首を横に振る。
日は完全に暮れ、ジッパーで区切られた窓から見える景色には、かつては巨大な競技場だったであろう建造物。
そう、俺はあの話し合いの後、彼らにもうひとつお願いをしていた。
「まあここらじゃ、競技場だった建物はここしかねーからな。早く降りろ。とっとと終わらせるぞ」
狭山さんが『スタジアム』と言っていた場所に連れてきて貰ったのだ。
ここに青野さんが一人で待っているはずだから。彼女を放っておくわけにはいかない。
俺がその願いをルビーに伝えると、彼女は50人近くいる小隊を一気に動かそうとしてたから、さすがにそれは断った。
ほかの兵士達は仕事に追われているようだったし、あの蟹を一撃で葬ったルビー、そして俺の話を冷静に聞いてくれるパドがいてくれればそれで問題ないと思ったのだ。
いや、この一国の小隊をも動かしてしまう権力という謎の力に気が引けた、というのが正直なところ。
「足元にお気をつけて、クロさん」
「あ、ありがとう、パド」
先に荷台から降りたパドは俺に手を差し出くれ、俺はそれに甘え荷台から降りるのを手伝って貰っていた時だった。
――――……??
反対車線から大きなトラックが俺たちの横を通過していったのだ。
「あれもルビー達の軍なのか??」
「いや、あれは私設兵団だ。正規軍じゃねぇ。あのナンバーは……コーネルんとこのか。気に食わねェー」
そう言って走り去っていくトラックのバックナンバーを見て舌打ちをするルビー。よくわからないが、彼女が好き嫌いがハッキリしているタイプなのはよくわかった。
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