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そうして運転手を残し、旧スタジアムに入っていくが外見から見てもわかる通り、中はもっと広い。
コンクリートむき出しの地面と床からは鉄骨が剣山のように突き出している始末。
パドに『地下倉庫』と伝えたところ、彼に思い当たる場所があったのか案内役を任されてくれたのだ。
青野さんがいれば俺の発言や証言を信じてもっと聞く耳を持ってくれるに違いない。
無事でいてくれ。
――――……。
「こちらです、足場が悪いので気を付けてください」
真っ暗な施設内の長い廊下を3人で進んでいた。
先頭にはライトが装着された小銃を構えるパド。道を曲がる度に機敏な動きで『クリア』と何度も空間の安全を確認してくれている一方で、
「はいよ。はぁー、ったく変なのに巻き込まれちまったぜ」
と自分の背丈と同じ大きさの斬馬刀を斜めに背負い、尻を掻いた後、両手を頭のうしろに当てて呑気に欠伸をしているルビー。
「二人を巻き込んだのは悪いと思ってるよ。車、無理矢理1台借りちゃったしな」
他の大型トラックには他の兵士たちがぎゅうぎゅう詰めで乗っていた。それが申し訳ないなって思ったんだ。
「どーせアタシたちしか乗んねー車だよ。アタシはエライからな」
エライ……?
するとパドがすかさずフォローを入れる。
「あの車両は役職者専用の車両……という事です。お気遣い感謝いたします。クロさん」
なるほど。確かにそうか。
顔や立ち振る舞いだけ見れば、その辺にいるボーイッシュな女子高生と変わらない。特に言動なんかは。だが、ルビーはパドの上司、軍曹だ。
いまだに信じられん……
それになんだか二人の関係性も徐々に見えてきた気がする。苦労してそうだな……パドも。
そんな事を思っていると、目の前には錆びついた防火扉が現われるが、その扉には大きな傷と少しばかりの隙間が生まれていた。
パドはその扉の傷に手を当て、
「こじ開けた跡でしょうか。それに少し温かい……軍曹」
「ああ、中にいるな。一匹……いや、コイツは……」
中にいる?じゃあそれって……
「青野さ――――!!」
――――……!?
俺はその扉に手を掛けた時、
「バカタレがッ!!」
ルビーに思いきり襟元を掴まれ後ろに投げ飛ばされた。その際に少し掴んだドアが一気に開かれる。
――――……!?
パドのライトに少しだけ照らされた黄色い眼が二つ。灰色の毛並み、レンガのような二本の前歯。
「これって……」
そこには毛の生えた犀のような鼠が長い尾を鞭のようのにしならせ何度も地面を叩いていた。
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