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本編
体がふわふわと軽い。
ゆっくり目を開けると、1メートルほど下のベッドで寝ている自分と対面して浮かんでいることに気づく。
この体に戻れるだろうか?
そんな不安を感じた瞬間、不意に強い力で引き戻されそうになる。
よく見ると、体と体がへその緒のようなものでつながっているではないか!
とっさに、「戻れなくてもいいんだ!」と念じると、引く力がフッとゆるまった。
その隙に空中を漂い、窓を開けてすべり込むようにしてベランダに出る。
外は薄暗く、離脱前と同じような時間帯だ。
緒の引力はすでに感じなくなっていた。
手足をバタつかせて夜空を飛行したが、すぐにゆらゆらと地面に落下してしまう。
強く尻餅をついたが、不思議と痛みは感じない。
空から探そうと再び飛行しようとするが、慣れないせいかどうにも上手くいかない。
諦めて自分の格好を確認することにした。
まずは両手をまじまじと見る。
指紋さえはっきりとしたいつもの手だ。
服装は離脱前と同じで、パジャマの上にセーターを着ている。
ズボンのポケットに手を突っ込む。
持ち込んだものは何もない。
足元はやはり裸足だが、特に何も感じないからこのままでいいだろう。
ここはどこかの街で、俺が住んでいる街とは明らかに違う。
落下した場所は、住宅が建ち並ぶ十字路の真ん中だ。
明かりのついている家は少ないが、今は何時頃なのだろう?
辺りは静まり返り、車や人が通る気配は今のところない。
どちらへ進むべきか迷っていると、聞き覚えのある声が脳内に響いた。
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