レフィエールの兄弟

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 かなりの日数が経って、トレアンはある日薬草を採りに出かけていた。木漏れ日であろうと差してくる陽の光は強く、頭に布を巻いておかないとくらくらするくらいだ。自分達の小さな町だって、同じようにいつもずっと暑い。ただ、決まった時期に近くの川の水量が増えるので、その期間からは食料の栽培などがドラゴン使い達の間では古くからなされてきた。  それにしても暑いものだ。水が増える頃は心なしか湿気も増したような気がして、肌にじめじめと染み込んでくる。彼は籠に一杯の薬草を入れて森を抜ける。低い壁の町の中に入って、太陽に手をかざしながら空を見た。心なしか少し青さが増したような気がする。  次は、薬草を庭で育てようか。トレアンはそんなことを考えながら自分の家へと入った。 「やあ、兄さん」  テレノスが顔を上げて言って、笑った。 「早かったのだな、テレノス」 「思ったより早く終わってさ、届け物の仕事。もう太陽の光が強すぎたし、暑くて死にそうだったから向こうの人に適当に置いておくって言ってからさっさと放置してきたさ」  この時期の仲間の男は皆大抵上半身をさらけ出して日に焼かれるが、見ればテレノスは腰布一枚だけでそこに座っている。トレアンはぎょっとして一歩後ろに引いた。 「……テレノス、ふ、服ぐらい着ろ」 「いいじゃないか兄さん。どうせ自分の家なんだし」 「せめて下ぐらい着ろ!私の術で浄化するぞ」  潔癖なんだから、と苦笑しながらも、弟は立ち上がって溜め息をつく兄の前でゆったりしたズボンを下着の上にはいて、再びその場にどっかりと座り込んだ。 「……腰ぐらい縛っておけ」  トレアンがそう言うのは、余りにもズボンの腰が広すぎて、立ち上がるとずれるからだ。 「いいじゃないか、こっちの方が涼しくて気持ちいいんだから。兄さんも縛るのやめたらどうだい、立ち上がらなかったらずり落ちもしないんだし、俺が見てて暑いんだよ」 「テレノス、そういう問題ではない――」  説教をしようと大声を出した時だった。何だか、聞き慣れない誰かの声がする。兄が突然喋るのをやめてあさっての方向に顔をやったので、テレノスも兄を見て、次いでその声に気付いた。
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