レフィエールの兄弟

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「さて、説明してもらおうか。兄弟」  アドルフが無表情で、そこに座らせたレフィエールの兄弟を見る。テレノスは少し首を傾げてから、兄をちらりと見た。こちらも同じく無表情で、目の前に座る人生の盛り真っ只中の男を見つめている。自分の兄が、自分と同じ立場で頭領のこれから始まるであろう説教を聞くことになるのかと思うと、少しおかしかった。 「君達は理解していないらしい、我々ドラゴン使いが人間やエルフからどのような評価を受けているか」  トレアンが眉間にしわを寄せた。だが、テレノスはさっきと同じ表情のままだ。アドルフは弟をじろりと見やってから、また話し出した。 「幾年か前に、レファントの地に迷い込んだ人間は大怪我を負った。気を失って倒れていた彼の人を助けた我々の仲間とそのパートナーのドラゴンが、意識が戻る時にちょうど居合わせたんだ。人間の方がドラゴンを見て、逃げ出した」  早とちりというやつだ、と彼は言って、短い溜め息をつく。テレノスを再びじろりと見て、口を開いた。 「その他多くの誤解が生まれ、我々に対する妙な考え方が生まれているんだとか。君が集会に来た時に、人間にはあまり深く関わらないように君の兄上にも伝えてくれと頼んだ筈なんだがね、テレノス」 「……ごめん、アドルフ。どうしても俺の考えにそぐわなかったから……」 「そういう重要なことを私に言わずに黙っていたのだな、そなた」  トレアンにまで睨まれて、テレノスは肩をすくめて小さくなった。ごめんなさいと数回呟いたが、理不尽だと言わんばかりの表情で、次の瞬間にはアドルフの方を見ていた。 「でも、何か間違ってるとは思わなかったのかい?その話に出てきたそのような浅はかな人間には教えてやればいいんだ、俺達はよほどのことがない限り誰にも危害は加えない、ってさ。それに、カレンはそこらの勘違いしてるドラゴン使いよりずっと賢いさ。勿論、俺達のことはちゃんと口止めしてあるし」  頭領は眉間にしわを寄せた。今日は、彼は自分の小さな息子のユーリヒを連れてきていない。人を叱責するところを見せたくないのだろう。アドルフの伴侶は、既にいない。誰かに預けているのだろうか。その人はまた短い溜め息をつく。
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