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炎にあぶられたロウのように、あたしは溶けていく。
息が苦しい。
体の奥の、下のずっとずっと底がじんじんしてて、溢れ出してくる。樹の舌先がそこに触れる。
熱い。
今まで感じたことのない熱にとろけていく。
甘く熱く高ぶる。
聞いたこともない声で喘ぐたび、もっともっと溶けてしまいたいと思う。
溶けだして流れ出す。
もうあたしはあたしじゃない。
樹ももっと溶けてしまえばいいのに。
そしてあたしと混ざっちゃえばいいのに。
あたしは樹に抱き締められて形を取り戻す。
貫かれる鈍い痛みがあたしを満たす。逃げようとするあたしを樹はきつく抱く。
「もう限界。最後までいくよ」
あたしは樹を見上げて、こくりと首を縦に振る。
最後?最後って何?どうなるのが最後?
わからないけど、もう全部、樹の好きにしていい。樹に抱かれながら樹を抱きながら、お互いを隙間なく分かちがたく一つに溶かし合う。
「ひろ、愛してる」
樹の喘ぎ声に胸が震える。
本当にずっとずっと一緒にいられますように。いるのかわからないけど、神様にお祈りする。
「ひろ、愛してる」樹は何度も囁く。「愛してる。ずっと」
やがて軽い痙攣とともに全てを吐き出して、樹は深く息を吐いた。
優しく、あたしを抱き締めて髪を撫でている。
「これからもずっと一緒だよ」樹は囁く。
本当に?と聞くことはできない。
だから、心の中でそうでありますようにとお祈りする。
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