1貫かれて

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樹はもったいぶってピアッサーを取り上げて鏡の中で、にやっと笑う。 あたしの気持ちを、樹は読んでいる。あたしは目を伏せた。これ以上、樹に知られたくない。 「だめだよ。ひろ、ちゃんと見て」 優しいのに抵抗できないような樹の口調で、あたしはマリオネットみたいに顔を上げてしまう。恥ずかしいのに。 「いつも言ってるだろ?入れるときはちゃんと俺を見ろって」 樹は目を逸らさない。あたしの目を捉えたままピアッサーで耳を挟む。 あたしは何かが溢れ出してくるような気がして、逃げ出したい気分になる。 でも、それを樹は許さない。 どきどきするのは、それがいつなのかがわからないから。 それは、樹が決めること。 「ひろ、傷が落ち着いたらお揃いのピアスしような。プラチナでダイヤのやつ」 「でも、高いんじゃない?」 「大丈夫だって。俺が買ってやるから」 「うん」 「俺とひろはずっと一緒だよ」 「うん」と返事しようとした時、いきなりぱちんと来た。 びっくりして「痛っ!」と声を上げた。 樹は顔色も変えずに薄く優しげな笑み浮かべたまま、あたしの耳に穴をあけた。 そして、あたしの耳を貫通したファーストピアスをくりっと動かす。ぴりっと痛みが走ったような気がした。 「消毒して1日1回でいいからこうやって。動かしとかないとピアスに肉が絡んで動かなくなるから。ひろの肉は、絡みやすいもんな」
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