いろはうた(仮)サムライ戦記

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「少し、昔話をしよう」 退屈だ退屈だ…と、おとろしが何度も連呼した成果があったのか、麦秋はそんな風に話を切り出した。 「…昔話?」 おとろしは興味津津の視線を麦秋の背中へ向け、それから大きく伸びをして起き上る。 そして、縁側に座っている麦秋の側へ行き、少し距離を置いてドカッと座った。 「幼い頃にババ様から聞いた話だ」 そんなおとろしの無作法を叱ることもなく、麦秋はクスクスと笑いながら話を始める。 昔話というからどんなものなのかと思いきや、それが麦秋が幼い頃に聞かされた話だと聞いて、おとろしの興味は薄れつつあった。 「ふぅん…?そんなものをオレに聞かせて、何か得でもあるのか?」 当然、おとろしの口をついて出てきた言葉は本心で、面倒だという視線を麦秋に向けている。 「ははは、そうだな。もしかすると時間の無駄…かもしれん」 おとろしがそんな態度を見せていても、麦秋は相変わらず優しく笑って、すっかり懐いてしまった小鳥を指先に止めている。 なんとも平穏な様子を見ていると無性にイライラして、おとろしは興味が薄れていた話を催促してしまっていた。 「焦らさないで早く聞かせろよ」 イライラしていることを知ってか知らずか、麦秋は自分の調子を崩したりはしなかった。 「それは悪いことをした。…それでは昔話を始めようか」 おとろしは目を閉じて、麦秋の声だけに集中する。 静かに話すその声はどうしてか良く通る、男に興味などないおとろしでも麦秋の声は特別に感じられた。 「遠い昔、二つの国がありました。頭に角が生えている一族の国と背中に翼が生えている一族の国です」 「頭に角が生えている一族の青年と背中に翼が生えている一族の青年は幼馴染でした」 「しかし…ある時、二つの国が戦を始めてしまいました」 「長い戦いが続く中で、ついに二人は出会ってしまったのです」 「しかし…互いが甲冑を身につけていたため、互いの顔を見ることが出来ず、目の前にいるものが幼馴染であることに気づけるはずもありません。そうして二人は戦いを始めてしまいます」
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