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「ねぇ、卯月。あなたと僕が初めて出会ったときのこと、覚えてる?」
不意に質問された卯月は記憶を反芻し、自分の記憶しているちはやとの出会いを思い出していた。
まだ、お互いに意識し合う前の…ちはやに幼さがあった頃のあのあどけない笑顔を思い出す。
ちはやと初めて会ったのは選択科目の時だった、髪に特徴のある青年だったからすぐに覚えた生徒でもあった。
「え?初めて?…軍事学校の選択科目で会ったのが初めてだったろ?」
そのことがどうかしたのだろうか?
ちはやがアルセイフからアルクラントになって、そろそろ一年が過ぎようとしているというのに。
「ニアピンですね。実はもっと前に出会ってるんです、僕とあなたは」
それとは違うと微笑まれ、卯月は頭の機能を総動員して記憶を探ろうとした。
しかし、それよりも夫であるちはやの言葉使いが気になり、記憶を探ることを中断する。
「え、そうだったのか?!…ってまた敬語になってるぞ。ちはや」
卯月に指摘されると、ちはやは「しまった…」という顔をして、クスクスと笑う。
重ねた年月がそうさせるのか、ちはやのその笑みにあの日のあどけない表情はない。
「あ、ごめん。気は付けているのだけど、これはもう癖になってしまったのかもしれないね」
「母様に言われてるんだよ。「ちはやちゃんはあなたのお婿さんなんだから、いつまでもあなたが上じゃいけないのよ?」って」
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