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夕方、私は永遠子を抱いて桜の下で待っていた
門がガチャっと開いた
『空、永遠子、ただいま』
『海里、お帰りなさい。ほらパパだよ』と私は海里に永遠子を抱っこさせた
『やっぱり顔は空と同じだ…でも重くなったな…』
『さあ早く中に入って、着替えたら夕ご飯よ』
『ああ、そうしよう』
永遠子をベビーチェアーに座らせ、私はリンゴをすりおろしていた
海里はいつもの椅子に座った
私達は何もなかったかのように、食事をした
逃げてるわけではない。お互い、真実をやっと受け止めて今日の食卓があるのだ
縁側で二人、久しぶりにビールを飲んだ
『辛かったろう?』
『それはお互い様でしょ?』
『強くなったね』
『私があんなに行動派とは自分でも驚き』と私は笑った
『理解してもらえないと思ったんだ…俺がしようとしている事…
桜井にはかなり止められた。殴られたくらいだ
でも自分が傷つけて、人生を変えてしまった彼女にお詫びをしたい、償いをしたい…ただそれだけだったんだ
でも看病してるうちに、生きてる今を思いきり楽しませてあげたいと思うようになった
それは桜井も、弥生も、奈々さんも一緒だった。優しい嘘の付き合いだったんだ
空が富良野に行ったと聞いて…どうしようかと思った
庭で空が倒れてたの見て、俺は必死だった
勝手な事して、なんて奴だと思うかもしれないけど…命が消えかけてる彼女の看病は最後までしようと決めたんだ』
海里はビールを軽く飲み干した
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